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ぎんぎつねシリーズ 金次郎 産卵 (リクエスト) by森谷2009-09-27(Sun)

金次郎 産卵 (リクエスト)
【続き→妖怪化した金次郎襲来

本当は侵食で体が黒く染まっていく、腹ボテ、とかいろいろあったんですけどすべてスルーしてしまいました。次こそはッ!

(11月16日追記)
 SSを執筆していただきましたもけさんに転載許可をいただきました。
 もけさんのサイトには他にもSS多数です。是非!



written by もけ


 金次郎の失敗は、人の世とは彼が思うよりも遥かに広く、そして世の暗部と言うのも、清浄たる神社から外を眺めてきた彼には想像も付かぬほど、深かったことだ。
 どれだけ神社に来る人間を見ても、彼は外の世界を知らぬままだった。
 社の中から境内を眺め、醜い人間、美しい人間、善人や悪人を見ようと、それは世間の一端でしかなく、彼の知っていた闇もまた、所詮は広い世界に潜むモノ達と比べれば、小さなものだった。
 そして、彼にとって何よりもの不幸は、その事実を理解したとき、すでに手遅れだった事である。
 そこは大規模な飢饉に襲われた地だった。彼の神社があった村は、豊穣の神を奉っていただけあり、人も、土地も豊かな場所だった。
 しかし今彼が居る場所は、土地は痩せ細り、人々は失意に暮れ、不の情念ばかりが薄暗い瘴気となって漂っている。
 いくら神に仕える存在であるとはいえ、狐一匹が救おうと思う事すらもおこがましい、煉獄であった。
「……ん、くっ、うぅ……ッ」
 金次郎は、苦しげに鳴き、神力を吸い尽くされ、腕ひとつ持ち上げられないほどに弱った体を震わせた。
 村に漂う瘴気は神使である金次郎と、その神との繋がりを阻害し、彼の力を弱める。
 そして、彼にまとわり付く妖怪は、弱りきった金次郎の体を自らの苗床として選び、彼をこの地に縛り付けていた。
 自分の身に余る物事に手を出した報い、彼はそう理解し、最初こそこの罰を甘んじて受け入れ、その存在を妖怪に食い尽くされ、消えていこうと思っていた。
 しかし、瘴気に包まれたこの地であっても、人々は神へと祈る。その祈りは、この地で最も神に近い存在、つまりは彼へと集まるのだ。
 その僅かばかりの祈りが金次郎の存在をこの世に繋ぎ止め、彼は瘴気に満ちた地で、妖怪の苗床として生かされ続けていた。
 金次郎は、腹の中で這いずり回る異物に呻きながら、人間で言う前髪のように伸びた毛皮に隠れる、黒い目を見開く。
 彼の腹の中で妖怪の幼生が動く様子は、外側からも確認できるほどだった。彼の腹は妖怪たちの脈動に合わせて蠢いている。
 もはや金次郎自身、自分の体内がどうなっているか予想が付かなかった。
 だが、こうやって妖怪を産まされ続けるうちに、彼の体が変容しているのは確かだった。
 最初に体内へ卵を産み付けられたとき、神使の体と妖怪の体とで拒絶反応を起こし、気が狂うほどの苦しみを味わった。
 だが、今は外から見ても腹が膨らみ、その中で何かが蠢いているのが分かるほどに、彼の体内は妖怪の卵に占領されているが、腹を限界まで膨らまされているという、物理的な苦しみしか感じない。。
 もう、自分の体内は妖怪と一体化しているのかもしれない。彼を捕らえ放さない一つ目の妖怪によって、妖怪を産むための孵卵器へと作り変えられているのかもしれない。
 嫌悪から彼のマズルにはしわが寄った。人々の祈りによって生きながらえた命で妖怪を育む道具にされたばかりでは足りず、本当の孵卵器へと変質されようとしている。
 身の毛もよだつ思いだが、ささやかな抵抗の術すらも持たぬ彼は、そうやって自らの体を苗床に、何匹もの妖怪を産み落とし続けるしかなかった。
 彼の体に触手を絡める、触手と大目玉の合わさった妖怪は、まるでそんな金次郎をあざ笑うかのように奇声を発し、彼の褌に触手の先端を絡めて捲り上げる。
 半開きになって濡れそぼった肛門が外気に触れ、金次郎は再度切なげに鳴いた。
 何匹もの妖怪を産み落とした彼の肛門は緩みきり、もう力を入れることも出来ない。
 体内で蠢く妖怪の卵が、その出口を目指して移動している。拳ほどはある物体が、直腸を下降していく感覚に、金次郎の体が震えた。
「あ――、あぁ……」
 腐った肉のような色合いの卵が、肛門へとたどり着く。表面に出来た口のような形状の部位から、毒々しい紫色の触手を伸ばし、出るには少しだけ小さい肛門を広げる。
 その感触に、金次郎はもはや口から漏れる艶やかな声を隠すことすら出来なかった。
(また、産まれてしまう……)
 拡がった肛門から、ぬるりと妖怪の卵が産み落とされる。口のような部位から「ゲブゥ」と不快な音を発し、地面に打ち捨てられた金次郎の衣へと転がり落ちた。
 だが、それだけでは終わらない。最初の一匹が通って拡がった肛門へと、次の卵の触手が触れる。
 まるで軟体動物のように柔らかい卵が、ひとつ、またひとつと、彼の肛門を通過して行った。
 膨らんでいた彼の腹も、卵が出て行くとともに徐々に凹んでいき、元の大きさへと戻っていく。
 一つ産むたびに口からは艶っぽい声が漏れた。体の変質に伴ったものだろうか。いつしか妖怪を産み落とす瞬間、彼の体には甘美な刺激が走るようになっていた。
 もう苦しさは無い。それどころか体内の卵を全て産み落とした後は、とてつもない空虚感が彼を襲った。
 まるで腹の中が空っぽになってしまったかのような妙な感覚が彼を襲い、また体内を何かで満たしたくて堪らなくなるのだ。
 そして、一握りだけ残った神使としての誇りを捨ててまで、それを頼んだりせずとも、妖怪はすぐにそんな彼の願いを叶えてくれる。
「あっ、あぁあぅっ!!」
 細長い触手が彼の肛門へと滑り込んだ。その快感に金次郎が吼える。
 もはや、この妖怪を拒んでいるのか求めているのか、その判断すらも付かない。
 ただ、妖怪の触手が広がりきった肛門から体内へと侵入し、腹の中をかき回す感触が、堪らなく気持ちいいだけだった。
 触手は同時に、口元にも迫って、彼の口を抉じ開け、喉へと伸びる。表面から滴る粘液の味が、口の中に広がった。
 初めて口にしたときは、生臭く吐き気を誘ったその粘液が、今は甘美な蜜のように感じられた。
 拷問のような時間の中、ひと時の安らぎを与えてくれる甘い蜜を、金次郎はペロペロと舐め、飲み干していった。
「ん、ぐちゅう、じゅ…んっ……」
 妖怪を産み落とした直後にだけ、まるでご褒美のように与えられる蜜を味わいながら、金次郎の股間を覆う褌が盛り上がっていく。
 体内を触手でかき回されるほどに、彼の男根は立ち上がり、褌に先走りを滲ませていた。
 まるで変質していく彼の体を確認するかのように、触手は肛門から差し込んだ触手で、金次郎の体内の隅々までを弄くり、やがて、きゅぽん、と音を立てて引き抜かれる。
 まだ足りないとばかりに金次郎の腰が震えたが、今度はまるで男根のような形状をした触手が彼の肛門へと挿入される。
「――あッ」
――びゅるんっ!
 先ほどよりも太い触手の進入に、艶やかな声を上げて射精した。褌に浮かび上がった染みが触手へと垂れ、そして吸い込まれる。
 そして今度は、男根型の触手の方が、金次郎の体内へと未熟な妖怪の卵を産み付けるための準備を始めた。
 挿入された触手が根元の方から膨らんでゆき、肛門を限界まで押し拾えるほどの太さへと変わる。
 そして、溜めたそれを一気に吐き出すかのように、金次郎の体内で熱い粘液と卵の奔流が吐き出された。
――ゴブッ、ゴポォォオオオオオ!!!
 射精と言うにはあまりに凶悪な勢いと量だ。体の内側から外側へと向けて殴りつけられたような激しい衝撃に、金次郎の腰が浮く。
 作られたばかりのの小さな卵が、粘液とともに金次郎へと流れ込んでいった。
 体内へと流し込まれた卵は、金次郎の一握りの神力を食い荒らしながら共食いを繰り返し、先ほど産み落とされた卵のようにして体外へと出る。
 卵で満たされた金次郎の腹は、産卵直前の先刻ほどではないものの丸みを帯びて膨らみ、その体内に妖怪を宿していることを物語っていた。
 触手が肛門から引き抜かれると、今まで脱力し切っていた肛門が、まるで金縛りのように硬く閉じる。
 今までは凝固性の粘液で肛門を塞いでいたのに。初めての経験に、金次郎の頭を満たしていた快楽が揺らぎ、不意に不安が襲ってくる。
 神使としての格など微塵も感じさせない萎縮しきった表情で、自分の体を目だけ動かして見回す。
 そして、その疑問に答えるかのように触手が蠢き、褌を破り取った。
「そ……んな……!?」
 金次郎の声は震えていた。彼の股間にそそり立つ男根には触手が絡み付いている。だが、彼の男根と触手の境目が無かった。
 最初から繋がっていたかのように地続きになっている。妖怪の卵をその見に宿し、幾度と無くその体液を注ぎ込まれた彼の体は、ついに妖怪と一体化してしまうまでに変質していたのだ。
 力の入らないはずの肛門が締まったのも、下半身の支配権をこの妖怪に奪われていたからだ。
 この妖怪は、神使を取り込もうとしている。孵卵器にしようというのではない。金次郎を、自らの体の一部として、卵を育てるための器官として取り込もうというのだ。
 体毛に隠れた金次郎の瞳が恐怖に染まる。妖怪が、それを見通しているかのように大きな目玉で瞬きする。まるで嘲笑っているようだった。
 同時に、男根だけでなく、太股に絡みついた触手が、彼と一体化し始める。金次郎は辛うじて動く首を、力なく横に振った。
 神使でも妖怪でもない、半端モノへと変質した体を抱え、後悔から来る涙を流す。
「はぁ……はぁ……、やめ、ろ……」
 まだ自分の意思で動かすことが出来る上半身を捩り、触手の呪縛から逃れようとする。
 だが、そんな彼を簡単に制する術を、妖怪は今しがた手に入れたところだった。
「は――、はぁっ……!?」
 金次郎の体がビクンと弓なりに跳ねた。今まで感じたことの無い感覚が、妖怪と一体化した陰茎に走る。
 強すぎる刺激に体が小刻みに痙攣し、奥歯をガチガチと鳴らしながら、刺激の発生源である陰茎を見た。
 彼の陰茎は、一体化した触手によって内側から刺激され、ビクビクと痙攣している。痛いほどに勃起し、先端から先走りを飛ばし、陰茎の内部でうねり回る細い触手が、鈴口から姿を現す。
 それだけではなかった。鈴口から姿を現した細い触手は、そのまま亀頭と一体化していく。腐肉の色をした触手が、赤黒い亀頭と一体化し、鈴口が完全に塞がれた。
 『栓をする』というのではなく、触手との癒着によって鈴口自体が消えている状態だった。
「ぁあがっ、がっ、ぎぃいいっ……!」
 射精どころか、先走りを出すことも出来ない状態に、金次郎の陰茎は一回り膨らむ。そして、膨張しきった肉棒の感度も、先ほどまでとは比べ物にならなかった。
 陰茎の中で触手が暴れ狂い、絶えられぬ刺激に絶叫をあげながら痙攣し、肛門から体内へ産み付けられた卵をシェイクする。
 まだ小さな卵たちが、体内で蠢いているのが分かった。金次郎と言う上質な孵卵器の中で、卵はもう成長を始めていた。
 変質した彼の体内は、神力を持ちながらも、妖怪にとって居心地の良い場所になっている。
 神使の体と妖怪との拒絶反応が起こらなくなり、繰り返される産卵と注がれる体液に体が変質し、そしてとうとう妖怪と一体化しようとするまでに変わってしまった金次郎の体内で、卵はこれまで以上の速度で成長していた。
(やめ……ろ……! これは、私の体だ……ッ)
 妖怪の触手によって体外から体を浸食され、同時に体内も卵が成長しながら彼の体を蝕んでいく。
 これまでいくら体を汚され、神使とは別の何かに変えられて行こうが、金次郎と言う個は依然としてそこにあり続けた。
 だが、今は違う。体は妖怪に蝕まれ、着実に奪われようとしていた。そして当然ながら、金次郎にそれに抗う力が残っている筈も無い。
 抵抗すら許されず、自分の体が少しずつ奪われるのを感じながら、金次郎は呻き、体を痙攣させていた。
「あ、ぐ……」
 触手が太股や股間を伝い、より奥へと、彼の体の中心へと侵食してくるのを感じ、悲痛な声が漏れる。
 まるで体内へと直接冷水を注ぎ込まれるような冷たい感覚に、金次郎の体の震えがいっそう強まった。
 脚を見れば、もはや触手が脚を侵食しようとしているのか、脚から触手が生えているのか傍目には分からないだろう状態だ。
 こんなにも堅牢な楔も無いだろう。金次郎は上半身を捩り抵抗を続けていたが、鼠が蛇に飲まれる最中、なおも鳴き声をあげるのにも似た光景だった。
 彼の苦しむ姿を映す大目玉は、それを楽しんでいるのか、随分と上機嫌に見えた。とうとう金次郎の体が、完全に自分の物になるときがきたと、理解しているらしい。
 下卑た喜びの感情が流れ込んでくる感覚が、彼の頭に走る。この状況への絶望がそんなものを想像させるのだと思ったが、しかし程なくして、彼は戦慄した。
「や……め、ろ……ッ、あぁ、……ぐっ、うぅ……」
 金次郎が消え入りそうな程小さな声で、恐怖に震えながら言葉を放つ。その今にも消えそうなか弱い拒絶を感じ取って、また感情の波が伝わってくる。
 妖怪の感情が流れ込んでくると言うことは、それだけ深く妖怪と溶け合っていると言うことに他ならない。そして、心さえもその侵食からは逃れられないと言う事でもある。
 神使と言う立場上、人間の願望や想い、様々な情念に接してきた金次郎だったが、どんなに深い悲しみや憎しみよりも、妖怪の思惟は彼に負担をかけた。
 おおよそ感情と呼べるかも分からない、この世の全てへの破壊願望、生ける者の嘆きを望む、利害も何も無い純粋な負の念が伝わってくる。
「――うぅっ、げぼぉッ、げっえ……ッ」
 金次郎は先ほど飲まされた妖怪の体液を嘔吐していた。流し込まれたときとは違い、彼の吐いた吐瀉物は、どす黒い色の粘液だった。
 黒い粘液は彼の胸の上へと跳ね飛び、名の示すとおり金色にも見える美しい毛皮の上に落ちた。
 金次郎の黒い目が見開かれる。これまで麻薬のような快楽を彼に与えていた液体は、こうして彼の体を蝕む邪念の塊に他ならなかったのだ。
 これこそが、彼の体を変質させていった原因の一つとも言えるかも知れない。今まで何度となく飲まされてきた液体の正体を見せ付けられ、金次郎は震え上がるが、しかしもう全てが遅い。
 その液体は長い時間をかけて彼の体全体へ行き渡り、すでに妖怪と一体化するまでに彼の体を作り変えていた。
 鼻と口から黒い吐瀉物を垂らしながら、金次郎は小刻みに体を痙攣させる。
 妖怪の黒い思惟をまともに受け、頭が割れるように痛んだ。先ほど産み付けられたばかりの卵も、腹の中で暴れて嘔吐感を助長する。
「あぁ――、……ッ、ぁ……!?」
 金次郎はうめき声を上げながら、体を弓なりにしならせた。それだけ彼の体が馴染んだと言うことだろうか、卵の成長の速度は、さらに増し続けている。
 神使である彼にそういった常識が通用するかは分からないが、人間にすれば体内で臓腑を喰らい尽くされるような感覚だった。
「も、や……め……ッ、がっ……!?」
 肉の塊が体内で蠢き、金次郎の体を内側から喰らっている。神使の体を、彼の腹の中の卵たちも求めていた。
 内側からその肉を喰らい、産み付けられた卵自体が神使の力を取り込もうというそれは、卵子が精子を取り込むのにも似ていた。宿主に激しい激しい苦痛を伴う、妖怪の生殖行為なのだ。
 腹の中の卵は金次郎を喰らいながら、同時に共食いを行い、金次郎の体内へと無数に流し込まれた卵は、一つの妖怪として収束していく。
「……ッ、ぁ……あ」
 苦しみに瞳孔が揺れ動き、口からはもはや意味も成さぬ呻き声が、搾り出されるように漏れた。
 薄気味悪い腐肉色の球体でしかなかった卵が、金次郎を喰らうことでその身を形作っていくのが感じられる。
 彼の腹にはその形状が時折り浮かび上がり、鳥や蛇の仔が卵の殻を破り産まれ出るように、金次郎と言う殻を破り捨てようともがいているのが見て取れた。
 口から黒い液体を吐き出しながら、金次郎が痙攣を続けるが、やがてその鳩尾から、鋭い爪が突き出された。
「――ッ!?」
 金次郎は体を弓なりにしならせた状態で、ぴたりと動きを止めた。爪は内側から、金次郎の体を縦に切り開いていく。
 卵を産み落としたときのような快楽など微塵も無い、苦痛しかもたらさぬ出産だった。もはや快楽によって金次郎の抵抗を抑える必要すらないのだ。
 そして、微かに赤みを帯びた黒い粘液に塗れる一匹の獣が、切り開かれた腹からにゅるりと顔を出した。
 表面は金次郎を捕らえる妖怪や、金次郎の産み落とした卵と同じ、腐肉の色をしている。そして体中にある口のような部位も、地べたに転がる卵と代わらない。
 しかしどこか不定形で生物とは異質な雰囲気を漂わせる、大目玉やその卵と違い、金次郎の腹を引き裂いて生まれた獣は、狐の形状をしていた。
 金次郎は、腹を切り開かれてもなおハッキリとした意識を保ちながら、自分の腹から生まれでた、奇形の狐を見た。
 まるで生気を感じさせない灰色の瞳と視線がぶつかる。狐の面の口が開いた。体中にある口のような部位も開かれる。
『――ッ……ッ……ッ!!!』
 聞いたことも無い音だった。体中の口から別々の音階で笑い声を出し、それら全部が重なって、喜怒哀楽のどれとも付かぬ意味不明な叫びになっている。
 ただ一つ確かなのは、その壊れた声に、金次郎はこれまでに無いほどの恐怖を感じたことだけだった。
 産まれ出た獣の体中にある口は、人が笑うときと同じ形を作り、舌のような紫色の触手を出している。
 金次郎の身を喰らい、その血族として産まれ出た妖怪は、おぞましい外見そのままの、身の毛もよだつ笑い声を発し、産みの親とも言える金次郎を嘲笑っていた。
 獣は体中に付いた粘液を跳ねながら、金次郎の腹から飛び降りる。代わりに、彼を捕らえる大目玉の触手が、切り開かれた腹へと伸びた。
 いくら捕らえ穢し尽くそうと、外部から神使を侵食し取り込むには相応の時間が掛かる。だが、ぱっくりと開いた腹から、表面以上に変質した体内を晒す金次郎は、今や本当の意味で無防備な存在になっていた。
 産まれ出た獣に食い荒らされ、まるで内臓を刳り貫かれた家畜のように空っぽになった腹へと、無数の触手が潜り込んでいく。
「ぁ……」
 体内へと侵入した触手が、体中へと侵食を始めても、金次郎はもはや声を出すことすらままならない。
 ひゅう、ひゅう、と腹から入った空気が口から抜けていく。体内で枝分かれした触手は、まるで神経のような様相を呈しながら、金次郎の全身へと広がっていった。
 最後の抵抗とばかりに、彼の上半身を包む筋肉がピクピクと震えたが、すぐにその体は完全に妖怪の支配下に置かれた。
 支配の証か、美しく染め抜かれた布に墨汁がしみこんでいくように、彼の金色の毛皮が黒く変色していく。
 切り開かれた腹は妖怪とつながり、一体化する形で塞がっていく。そして最初は斑のように変色していた彼の毛皮も、そのうちにどす黒く変色した部分の比率が増え、やがては首から上を残して漆黒に染め上げられていた。
 しかし、その侵攻は首元で止まり、中々その上へと向かう気配を見せない。産み付けられた卵や取り入れた妖怪の体液からも離れた頭は、最も変質が進んでいない部位でもあった。
 完全に取り込まれる前に、黒い思念の奔流へ飲み込まれていく前に、覚悟を決めるための時間だろうか。
 絶望と恐怖に、いっそのこと発狂したいとまで思っていた彼だが、全てに諦めをつけるための時間と言うのも、考えようによってはありがたい。
 不甲斐ない自分にも、消える間際にほんの少しの加護を得ることは出来たのだろうか。
 最後に、今も神社の中でぐうたらとしつづけ、みかんと惰眠を貪ってるだろう銀太郎や、もう大人になっている頃だろう、神主の息子や、神社へと参拝し、様々な感情を残していった人々が、次々と脳裏に思い浮かぶ。
 神使となる前、ただの狐としての生を終えるときもこうだっただろうか。これが、走馬灯と言うものなのだろうか。
 気付けば、その全てに対して未練を持っていたと気付く。帰りたい。心底そう思い、次から次に涙が溢れた。
(だが、もう……)
 帰れない。その現実を突きつけるように、黒く染まった両手が、金次郎の顔へと迫った。鋭い爪が見せ付けられ、指と爪の隙間から、寄生虫のように細かな触手が漏れ出ている。
 太い指は、ぐちゃっと音を立てて金次郎の両目へと突き入れられた。指先から伸びる細かな触手は、金次郎の頭さえも侵食していく。
 細かな触手は、金次郎の頭の中で網を作るように絡み合い、記憶さえも侵食していった。
 脳裏に輝いていた思い出が喰らい尽くされている。体に刻まれた記憶が奪われていく。金次郎と言う存在を形作っていたものが消えていく。
 気付けば彼は、ただの狐だった頃の姿で、暗闇の中震えながら体を丸めていた。
 上も下も分からない場所で、ただ全てが奪われていく恐怖に泣いていた。
 やがて、彼自身の体も消えていく。頭の中には、消えていった記憶の代わりとばかりに、妖怪の黒い思念が流れ込んでくる。
 価値観は失われ、何が正しいのか、自分が何なのか、何が目的なのか、全てが分からない。ただ、頭の中に流れ込んでくる思念だけが、ただ何も無い空間での道標だった。
 そして彼は、理性を持たず破壊願望だけしかない妖怪の代わりに、思考し始める。どうすればいいのか、頭の中を満たす願いを実現する方法を考え始める。
 三角形の耳の先まで黒く変色し、彼はその魂までも妖怪に奪われていた。より強い妖怪を作るための器官として、そして神力を手に入れるための器官として、体を支配されたように、本能しか持っていなかった妖怪が思考するための器官として、魂を取り込まれる。
 もはや、金次郎と言う存在は完全に消え去る。金次郎の姿をした黒い妖怪がそこに残され、その狐の面に凶悪な笑みを浮かべながら、顔を覆っていた手を離した。
 そこには体の持ち主とはまるで違う、ギラギラと狂気の色をたたえる単眼があるだけだった。
 破壊願望をぶつけるものを求めて、その単眼がぎょろりと動き、遥か西の方角を見据える。喰らい尽くした金次郎の記憶に垣間見た、幸せそうな場所。壊さなくては。
 それだけを思い、妖怪は動き出していた。




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