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【健全】獣人組織に潜入する人間の青年 by take2011-04-05(Tue)

某所でお題を募集して書いた物です。エロ描写のないほのぼのものです。

***


「というわけで、朝の会議はこれまでにする!」
 一際大きな声を放つ蒼色の鱗を持つ竜人の男。頭に生える一対の角には年季を思わせるひびが刻まれており、着ている服は非常にゆったりとしている着流し。そしてその竜人に注がれる幾多の視線。
 視線を注ぐのは狼、虎、猪、熊、馬、ハイエナ、鳥、狐、狸……。その中に人間の姿はいない。
 ここは、獣人だけによる集合組織。それも表沙汰になるようなことはありえない、秘密裏に結成された組織である。
 上は還暦を迎える老人もいれば下は小学生程の年齢の少年もいるこの組織。皆どこから流れてやってきたかはわからないが、ボスである竜人に並々ならぬ敬意を持っているのは確かであった。
 繁華街の地下にひっそりとアジトを作り、日々非人道的な活動をする組織で、殺人、麻薬売買、放火、身売りを生業とする。
 ──という噂であった。
 会議が行われたのは広めのホールで、数十人による構成員の前には竜人が指揮を執っていた。竜人が会議の終わりを告げると皆、一様に敬礼をして散り散りになる。その中で、後方にいた1人の犬獣人の少年があっけらかんとしていた。
(なんだそりゃ……?)
 会議が行われた様子を一から集中して聞いていたが、犬の少年は状況が理解できずにいた。彼よりも年上の構成員たちが後ろの扉へと駆け込み、今日も組織活動を行うために外へと出る。
「こら、走って転んではいけないぞ」
 竜人が構成員たちに向かって大声で言う。それに反応して構成員たちはすいませんと言って1人、また1人ホールを抜ける。
 その中で犬の少年はぽつんと取り残されていた。
「どうした?」
 と、そこに一番前に立っていた竜人が犬の少年へと歩み寄る。犬の少年はびくんと肩を震わせる。
 その表情は犬の少年に疑問を持っているようで、頭上には疑問符を浮かべている。
 犬の少年は頭を振って、現在自分がどのような立場にいるかを思い出す。
「ご、ごめんなさい、すぐに行きます!」
 そう言って犬の少年はくるりと竜人に背を向けて他の構成員と同じく扉の向こうへと走る。
 竜人はぽりぽりと顎を掻いており、犬の少年を随分慌てん坊だな、とにこやかに見送った。


***


 最初に獣人組織へのスパイ任務を任されたとき、犬の少年は大層肝が冷えた。
 まず、厳密に彼は犬の少年──どころか、まず犬獣人ですらない。薬によって一時的に元の人間の姿から骨格を変え、体毛と尻尾を生やし、手足の先には肉球を持って犬獣人へとなったのだ。
 しかも元々彼は少年ではなく、20歳を過ぎた青年である。本来彼はこの獣人組織の動向を探るべく、様々な手段を講じて調査していたのだが、上層部が痺れを切らして彼に潜入任務を任したのだ。
 アジトは突き止めてはいるものの、地下にある組織ということで大人数は動かせず、また連絡も取れないということで単独任務を任されたのだ。
 おまけに犬獣人へと変化する薬はまだ開発途上だったらしく、犬獣人へと変化したものの、体格は幼くなり、また声も変声期を迎える前のボーイソプラノになり、結果少年へとなったのだ。
 だが、かえってこれなら相手も子供だから油断するだろう言う根拠のない上層部の判断から、そのままこの獣人組織へと送り込まれたのだ。
 後で人事部に訴えてやる、と吐き捨てても任務は免れない。心細く、また武器も連絡手段も携帯できないで不安は募るばかりで潜入したのが数日前。
 下水道を潜ってあっちへいったりこっちへいったりで道に迷った挙句、獣人組織の構成員に見つかったのだ。
 適当に自分と似た犬獣人の少年と入れ替わろうとしていたのにあっさりと見つかって彼は死を覚悟したが、意外にも構成員の反応は不思議なものだった。
『こんなところに1人で……。良く頑張ったな』
 思わずその言葉に目をぱちくりと瞬かせ、適当に相槌を打っているといつの間にか自分はアジトへと連れて行かれたのだ。
 どうやらこの獣人組織は、人間たちによって迫害された者たちの集まりで、自分も人間に迫害されてここへ逃げてきたと勘違いされたらしい。
 そうしてあの竜人の前に連れて行かれ、適当に両親と離れてしまって……と言ったところで、同じ場所に居合わせた構成員を含め、ボスである竜人も号泣。これには犬の少年が参ることになった。
 そのまま流れで自分も構成員として加わり、今日も地上の人間たちに復讐を、と朝の会議が開かれたのだが、内容は驚くものであった。
「勝手にゴミ拾いを済ませて清掃業者の仕事を失くしてやろう!」
「学校帰りの小学生にお菓子を配って栄養を偏らせてしまえ!」
「家庭教師として勉強を教え、子供を受験戦争に巻き込んでしまえ!」
「困っている人がいたら助けて依存症を植えつけてやれ!」
 その規模の小ささ、というか見方を変えればいいことをしているような気がしないでもない組織行動に犬の少年は頭を悩ませていた。
 自分が人間のときは殺人組織だとか麻薬売買で幾人も廃人にさせただとか、黒い噂が絶えないもので恐怖を抱いていたのだが、実際はどうだ。
 自分が構成員として加わって様々な種族の獣人と接触を試みたが、口調は優しく気遣いのあるもの達ばかりであった。
 そうして犬の少年も気づいた。そういう噂があるものの、未だにこの組織から逮捕者は出ていない。つまり、勝手な思い過ごしなのだ。
 仮想敵組織だと処理すれば対応が楽であるし、また勝手に敵を作り出せば統率力のない組織は一つにまとまる。
「人事部どころか上層部に訴えねーと……」
 と、地上に出て人の目がないところで密かにゴミ拾いをし、また重い荷物を背負っている人の荷物を持ってあげたり、時には同じ年代の子供ということで小学生と遊んであげたり、悪の組織とは似ても似つかわしくない仕事をこなすのであった。


***


「意味わからん……マジでよく分からん……」
 アジト内部にある大浴場の湯船に浸かりながら犬の少年は頭を抱えていた。それは夕食後の会議で、明日は休日だという報告がなされたからだ。
 悪の組織に休日ってどういうことなんだよ、しかもその休日の理由が祝日だからってそれはどういうことなんだよ、と心の中でツッコミを入れまくってツッコミは最早苛々に変わりつつあった。
 犬の少年はそうやってぶつくさ独り言を吐いて風呂に入り、気がつけば他の構成員は全て風呂から上がり彼だけが残されていた。
 しかし元々人間だったためだろうか、身体に張り付く体毛がまるで服を着ているかのような感触でやはりなれない。
 もう数日もすれば慣れるだろう、と思った直後、そろそろ薬の効果が切れることを思い出した。
 一応薬はいくらか忍ばせており、量を考えれば後1ヶ月程度は犬獣人に変化を保つことが出来る。
 いずれ自分の所属する組織に戻って報告をしなければならないのだが、この組織の居心地が良くて犬の少年は帰るのを躊躇ってしまう。
 何より大人の知識を持ったまま子供に戻れるというのはなかなかにない体験であり、犬の少年はもう少しだけこの状況を楽しもうとしていた。
「おう、まだ入っていたか」
 がらっと大浴場の扉が開けられ、そこには竜人がタオルで股間を隠して入ってきた。
「あ、は、はい!」
 しまった、と犬の少年は思わず湯船から直立して敬礼をしていた。考え事、というかこの組織へのツッコミどころを模索していたらかなりの時間が経過していたらしい。
 組織のトップと同じ湯に浸かる、それは組織の上下関係を考えれば自ずとまずいことだと分かる。
 急いで犬の少年は浴槽のへりに置いたタオルを取って湯船から上がろうとするが、それよりも先に竜人がそれを制する。
「何、裸の付き合いもいいじゃろう」
 竜人はそう言って犬の少年の手を掴む。犬の少年は出来れば避けたいところであったが、ここで逃げようとすれば怪しまれる。
「……分かりました」
 仕方なく犬の少年は再び肩まで湯船に浸かる。竜人もタオルを浴槽のへりに置いて湯船に浸かる。比較的大柄な竜人が湯船に浸かると一気に湯が溢れる。
 一体どういうつもりなのだと犬の少年は竜人の動向を探る。自分はまだここに入りたての新参。嫌な予感しか入らない。
 既に自分が人間だということを気づいたのだろうか、例えば無意識のうちに人間しか行わない癖が出てそれを見抜かれたのか。
 竜人の動向が一切分からない以上、相手からの言葉を待つしかない。犬の少年はちらりと視線を上に向け、竜人の顔を伺う。
 と、竜人もちょうど自分を見やり、視線がぶつかる。一瞬犬の少年の心臓が強く鼓動を鳴らす。
 だが驚くのはそれからであった。突如竜人の腕が犬の少年の首へと回され、竜人のほうへと引き寄せたのだ。
 犬の少年が湯に浸かっていなければ全身の体毛が逆立っていただろう、今は湯に浸かって体毛がぺとりと張り付いていることを感謝する。
 仮にも相手は組織のトップ、まさか、この場で自分を絞め殺そうというつもりなのだろうか。
 そう思うと自分の首や肩に絡まる太い腕が凶器のようにも見える。今の自分は子供だ、体格差は十分なものでしかも相手は鱗を持つ竜人。腕に噛み付いたところで自分の幼い牙は鱗によって剥がれてしまうかもしれない。
 むしろ、今まで善人ぶっていたこの組織は、自分がスパイだと気づいての演技なのでは、途端にこの組織への警戒心が高まる。
 しかし、今更警戒心が高まったところで身体は竜人の手の中。万事休すか、と思ったところで竜人の口が開く。
「ここはなれたか?」
 竜人は犬の少年を見下ろして言う。何故だかその言い方が優しいもので、少しだけ犬の少年はむず痒くなる。
 ここは話をあわせるべきか、一瞬の思考の中で隙あらば逃げようと決意し、犬の少年は会話に応じる。
「はい。皆さんとてもいい人で助かります」
「そうか、ここにいるものは皆君と同じように心に傷を負っている。だから相手の気持ちも良く分かる」
 ふと犬の少年の肩を掴む竜人の腕が、更に竜人の元へ犬の少年を抱き寄せる。濡れた体毛が鱗に張り付く。
「いずれはそうだな、この街を支配したいものじゃ」
 世界じゃなくて1つの街とか小さすぎる規模だろ、と竜人には聞こえないほどの小さな声で呟く犬の少年。
 しかしながら、竜人を慕うものは多い。それは事実であり、構成員の誰もが竜人のことを尊敬し、そして頼っていた。
 これなら近いうち、この組織が地上に出てきて街を支配するのも時間の問題である。
「それと思ったんじゃが、君は今度からわしの……そうだな、右腕として活動してみないか?」
 その言葉で犬の少年はぶっと吹き出す。予想だにしない言葉で頭が混乱する。
 この竜人、いよいよボケが入ったのだろうか、入って間もない構成員を幹部クラスに置くとはどういうことか。
 もう犬の少年はツッコミではなく、組織のボスとしてのあり方を説教しようとしていた。
 こんな組織を今まで危険視してきた自分は何だったのだろうと思って肩の力がどっと抜ける。
「あの、お言葉は嬉しいですが……」
 手を振って断る。と、竜人はがっくり肩を落とし項垂れ、ため息を吐く。
「そうか……孫みたいで可愛いと思って手元に置きたかったんじゃがのう……」
 犬の少年の口元が釣り上がり、黒い鼻がぴくぴくと過剰なまでに動いていた。実力とかではなく可愛さで選ぶことにいい加減、犬の少年は堪忍袋の緒を切らしたかもしれない。
 だが寸でのところで竜人の鱗の冷たさが頬に伝わり、冷静さを取り戻す。
 が、竜人はまるで犬の少年を孫のように頭を撫でる。人の話を聞け、と言いたくなったが、頭を撫でられるのは何年ぶりだろうと懐かしむ。
 少しごつごつとした鱗の手触りは元人間の犬の少年からすればなんとも不思議な感触である。その気持ちよさから、無意識に尻尾が湯の中で左右に揺れ動く。
 実際この場所は居心地が悪いわけではない。組織のトップがこうであり、また構成員は誰1人として自分のことを疑ってはいない。
 本来の目的を忘れ、こうして任務を忘れて人と触れ合うのも悪くはない。
「ここに再就職しよっかな……」
 ぶくぶくと水泡を立てて言葉を濁し、竜人に聞こえないように本音を避ける。
 薬の効果が消えるまで後1ヶ月。それまで悪の組織に身を沈めるのも悪くはないと思った。


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